拡大を続けるEC市場と物流

拡大を続けるEC市場と物流

近年急成長を遂げ続けるEC業界

1990年初頭にECサービスが誕生し、Yahoo!ショッピング、Amazon.co.jp(アマゾン)、楽天市場のようなモールサービスが開始し、拡大しました。また、iPhone(スマートフォン)の販売開始とともにSNSやフリマアプリの飛躍的な拡散が起こり、EC市場は今もなお世界規模で拡大し続けています。

現在のところ日本のEC化率は未だ10%未満ですが、今後その割合は向上していくことが見込まれます。EC化率とは、全ての商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合のことです。

経済産業省の調査では、2023年の消費者向け電子商取引の市場規模は24.8兆円で、前年比で9.23%増加。EC化率も0.25ポイント増加したことが分かっています。
出典:経済産業省「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」

伸長し続けるEC業界から必要とされる物流とは

センター出荷能力のキャパシティを確保することと、多様化する顧客ニーズに対応できる柔軟性が重要です。商品の流通を伸ばすことができても、後方支援のロジスティクス部隊がそれについていけなければ、市場拡大のチャンスを逃すことになります。商流と物流は車でいう両輪にあたるものですから、同じスピードで回すことが重要です。

また、EC市場の伸長とともにEC事業者同士の競争は激化し、顧客ニーズ、ウォンツへの対応が、顧客(ファン)獲得のためのカギとなっています。それらを実現するためには、物流現場で、システムと流通加工などの柔軟性を確保することが伸長し続けるEC業界から必要とされるための重要な要因となってきます。

EC物流の課題

EC物流の課題

EC物流を行う際に課題となってくるのは、大きく分けてマネジメント面とコスト面です。
どんな課題があるのか具体的にご紹介します。

マネジメントの課題

在庫管理の難しさ

さまざまな商品を、ECによって消費者(エンドユーザー)に送るために、倉庫でも高度な在庫管理をすることが必要です。賞味期限管理やロット管理ができることは必須で、リアルタイムに在庫数の把握ができる仕組みが必要不可欠です。
在庫数を把握してそれを管理することは、市場拡大のチャンスを掴むための重要な要因です。

商品管理・受注管理の難しさ

せっかく注文を受けても、スピーディに商品を届けられないと、消費者の熱が冷め、キャンセルにつながりかねません。注文情報の確認や、消費者のニーズ、ウォンツを満たすための施策、サービスの確認は”スピード感”を持って対応することが重要となります。

人材確保の難しさ

市場拡大のチャンスは、広告施策やモールでのセールによって急に訪れることが予想されます。そんな時に、注文からお届けまでのリードタイムが長くなってしまうと、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。
センター出荷能力の一因を担う「人材の確保」は、物流事業者の必要な能力の一つとなっています。

コスト面の課題

運送コストの上昇

EC業界が伸長し続けていることと、宅配ドライバー不足により、私たちが望む宅配網を維持するのが困難な時代になってきました。宅配業者はそれぞれ、ドライバーの労働環境の改善に取り組んでいるものの、EC業界の伸長スピードには対応が追い付いていない状況です。しかし、バックヤードの状況とは裏腹に、BtoC、BtoB共にEC化の波は大きくなるばかりです。さらに、コストをかけてでも宅配網の維持をすることが、宅配業者の社会的責任となってきており、直接的に送料の値上げへとつながっています。

在庫管理のコスト

最低賃金は2021年から前年比で3年連続3%以上昇し、これからもベースアップしていく見込みです。労働集約産業に位置づけられる物流業では、その上昇は大きなコストアップの要因であり、企業経営を圧迫しています。そこで重要な対策の一つとして、「自動化による省人化」が挙げられます。全自動にはまだ時間はかかる見込みですが、「人×機械×IT」の力で、工数を削減し、単価上昇に打ち勝っていくことが物流コスト削減のカギとなります。

EC物流の課題を解決する方法

先ほどご紹介したEC物流の課題に対する解決方法としては、アウトソーシングとシステム導入が挙げられます。
アウトソーシングとシステム導入について詳しくご紹介します。

物流のアウトソーシング

自社が展開する業界で存在感を示すためには、自社の強みを理解し、それを最大限に発揮する必要があります。

そのためには、「コア業務」「ノンコア業務」を仕分け、ノンコア業務に関してはアウトソーシングすることが、事業成功へのカギとなってきます。
EC事業者のコア業務は、商品の企画開発と販売です。

バックヤードに関しては、その道のプロにアウトソーシングし、商流と物流の両者をスムーズにしていくことで、事業拡大のスピードを上げることができます。アウトソーシングの活用は、品質を担保した上で、企業成長スピードを上げるための一つの経営手法といえます。

物流全体を管理するシステムの導入

「在庫管理」「入荷」「出荷」「返品」などの通常物流業務の品質を担保し、よりスムーズな流れにするためにはIT支援は欠かせません。特にEC業界においては、消費者ニーズをくみ取り、TPOに合わせたサービス提供を倉庫で対応する必要もあります。こちらの対応も、手作業ではなく消費者購買データをもとに、IT支援を受けて行うことがベターで、今後高度化することが見込まれます。そういうニーズをくみ取ったシステム導入が、EC業界で勝つためのカギとなります。

物流代行とは?

在庫管理から出荷、消費者に荷物を届けるまでの業務を一括して代行してくれるサービスです。

物流代行で実際に代行してもらえる業務は?

業者によって対応しているサービスは異なりますが、商品の保管・管理や受注処理、発送準備から配送など、その業務は多岐にわたります。各種サポート対応にも差があるので、「どこまでフォローしてくれるのか」について事前に確認しておくとよいでしょう。

物流にかかるコスト

商品の管理やスタッフへの人件費、倉庫の管理費など、自社で物流をまかなうには多くのコストが発生します。物流代行を利用することで、コスト削減が期待できます。

物流代行してもらうのにかかるコスト

WMS(倉庫管理システム)の使用料や商品を保管するためにかかった費用などは「固定費」として必ず発生します。また、商品の検品や梱包のほか、入荷や配送があるたびに発生する「変動費」もあります。その名のとおり、量によって金額が変わっていくので、サービスを利用する前に必ず見積もりをとっておきましょう。

実際に物流代行を検討するなら

これまで物流に関することをご紹介してきました。ここからは実際にサービスを検討している方へ向けて、それぞれのメリット・デメリットについて触れていきます。

物流代行のメリット

物流代行サービスを依頼すると、以下のようなメリットが期待できます。

  • 物流をプロに任せることで、販促などの作業に集中できる
  • 商品管理、発送にまつわるコストが削減できる
  • 作業ミスが減り、配送品質が保たれる

専門の業者に任せればヒューマンエラーの減少が期待でき、消費者の満足度向上につながります。

自社で配送業務を行う場合は、人員や倉庫の確保が必要です。しかし、配送業務には閑散期や繁忙期があります。常に一定数の人員を雇用したり繁忙期に合わせてアルバイトを募集したりすることには大きなコストがかかります。その点、専門の業者に任せれば人件費や採用コストを抑えられます。

消費者に商品を届けるためには配送が必須ですが、EC業者がそのまま配送のプロというわけではありません。物流は物流のプロに任せたほうが消費者の満足度向上につながりやすいでしょう。コスト面と配送品質、そして自社の人員をコア業務に集中できるといったメリットが、物流代行の導入にはあります。

物流代行のデメリット

物流を任せるということは、代行業者と顧客情報を共有することになります。情報漏洩する可能性も考えられるので、信頼できる業者を探すことが重要です。

また、発送に関するノウハウが自社に蓄積されないため、自社物流に切り替えることになった際に現場で混乱が生じ、トラブルに発展する可能性もあります。将来的に自社で物流業務を行う可能性がある場合は、物流業務全体を他社に委託するのではなく、部分的に自社でも物流を行うなどの工夫が必要となるでしょう。

物流代行サービスを選ぶときの注意点

EC事業者にとってメリットの多い物流代行サービスですが、前述の通り顧客情報の漏洩などの大きなトラブルにつながることもあるため、信頼できる業者を探すことが重要です。

業者選びにおいては、物流業務をどこからどこまで任せられるのかはもちろん、自社の商品と同ジャンルの製品を同程度の物量で扱ったことがあるか、トラブル時のサポート体制は整っているか、誤出荷の割合などを参考にすることをおすすめします。

業者によっては倉庫の様子を見学できる場合もあるので、サービスを利用する前に自身の目で確認しましょう。

まとめ

進化し続けるロジスティクスは、専門性の高い領域で、その範囲は多岐にわたります。

単に「物流」というA地点からB地点にモノを運ぶことのみではなく、製造→調達→在庫→販促販売→消費→回収再利用までの一連の流れを俯瞰し、時代や企業の成長段階に合わせて、全体最適を前提に、各部署に策を講じる必要があります。

自社でロジスティクスの専門知識を携えた人材の採用をするのは難しいので、専門家へ相談することが
おすすめです。

ロジスティクスコンサルティングを活用し、時代や企業の成長段階に合わせた手を講じていくことで、さらなる飛躍を目指しましょう。

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