物流代行とは?EC市場やEC物流の課題について

この記事では、

  • 拡大を続けるEC市場と物流代行ニーズの背景
  • EC物流におけるマネジメント・コスト面の課題
  • 物流代行の仕組みやメリット・デメリット
  • 物流代行サービスを選ぶ際のポイント

について、EC事業を展開する企業担当者の方に向けて解説します。

拡大を続けるEC市場と物流

近年ニーズが高まり続ける物流代行。まずは、ニーズ拡大の背景にあるEC市場の成長について詳しくご紹介します。

近年急成長を遂げ続けるEC業界

1990年初頭に誕生したECサービス。その後、Yahoo!ショッピング、Amazon.co.jp(アマゾン)、楽天市場のような代表的なモールサービスがスタートし、成長しました。また、iPhone(スマートフォン)の販売開始とともにSNSやフリマアプリが飛躍的に拡散。EC市場は今もなお世界規模で拡大し続けています。

全ての商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合を示すEC化率において、現在のところ日本はまだ10%未満です。しかし、今後その割合は向上していくことが見込まれます。経済産業省の調査では、2024年の消費者向け電子商取引の市場規模は26.1兆円で、前年比5.1%増加。EC化率も0.4ポイント増加したことが分かっています。
出典:経済産業省「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」

伸長し続けるEC業界から必要とされる物流とは

EC市場の伸長とともにEC事業者同士の競争は激化しており、顧客ニーズ、ウォンツへの対応が、顧客(ファン)獲得の大きなカギとなっています。こうした状況を受け、物流業界において重要となるのは、センター出荷能力のキャパシティを確保することと、多様化する顧客ニーズに対応できる柔軟性を持つことです。

商品の流通を伸ばすことができても、後方支援のロジスティクス部隊がそれについていけなければ、市場拡大のチャンスを逃すことになります。商流と物流は車でいえば両輪にあたるもの。同じスピードで回すことが重要です。

EC物流の課題

EC物流の課題

EC物流を行う際に課題となるのは、大きく分けてマネジメントとコストです。どんな課題があるのか、具体的に解説します。

マネジメントの課題

在庫管理の難しさ

さまざまな商品をECを通じて安定的に消費者(エンドユーザー)に送り市場拡大のチャンスを掴むためには、倉庫において高度な在庫管理をすることが必要です。賞味期限管理やロット管理ができることは必須であり、リアルタイムに在庫数の把握ができる仕組みも必要不可欠です。

商品管理・受注管理の難しさ

せっかく注文を受けても、スピーディーに商品を届けられなければ消費者の熱が冷め、キャンセルにつながりかねません。注文情報の確認や消費者のニーズ・ウォンツを満たすための施策の展開まで、スピード感を持って対応することが重要となります。

人材確保の難しさ

市場拡大のチャンスは、広告施策やモールでのセールなどによって急に訪れる場合があります。そんな時に人手が足りず、注文からお届けまでのリードタイムが長くなってしまうと、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。センター出荷能力向上の一端を担う人材の確保は、物流事業者の必要な能力の一つとなっています。

コスト面の課題

運送コストの上昇

EC業界が伸長し続けていることに加え、宅配ドライバーの不足により、ニーズを満たす宅配網を維持するのは困難な時代になってきました。宅配業者はそれぞれドライバーの労働環境の改善に取り組み人材の確保を進めてはいるものの、EC業界の伸長スピードに対応が追い付いていない状況です。

しかし、バックヤードの状況とは裏腹に、BtoC、BtoB共にEC化の波は大きくなるばかりです。人員コストをかけてでも宅配網を維持をすることが宅配業者の社会的責任となってきており、間接的に送料の値上げへとつながっています。

在庫管理のコスト

最低賃金は2021年から3年連続で前年比3%以上昇し、これからもベースアップしていく見込みです。労働集約産業に位置づけられる物流業において、最低賃金の上昇は大きなコストアップの要因となるものであり、企業経営を圧迫しています。

その課題に対する重要な対策の一つとして、自動化による省人化が挙げられます。全自動にはまだ時間はかかる見込みですが、人×機械×ITの力で工数を削減し、単価上昇に打ち勝っていくことが、物流コスト削減のカギとなります。

EC物流の課題を解決する方法

EC物流の課題を解決する方法

EC物流の課題を解決する方法としては、アウトソーシングとシステム導入が挙げられます。それぞれ詳しくご紹介します。

物流のアウトソーシング

自社が展開する業界で存在感を示すためには、自社の強みを理解し、それを最大限に発揮する必要があります。そのためには、コア業務とノンコア業務を仕分け、ノンコア業務に関してはアウトソーシングすることがカギとなります。

EC事業者のコア業務は、商品の企画開発と販売です。バックヤードの業務はその道のプロにアウトソーシングし、商流と物流の両者をスムーズにしていけば、事業拡大のスピードを上げることができます。

アウトソーシングの活用は、品質を担保した上で企業成長スピードを上げるための一つの経営手法といえます。

物流全体を管理するシステムの導入

在庫管理、入荷、出荷、返品などの通常物流業務の品質を担保し、よりスムーズな流れにするためには、IT支援が欠かせません。特にEC業界において、消費者ニーズをくみ取り、TPOに合わせたサービスを提供するためには、倉庫の適正な運用も欠かせない要素となります。その運用においては、手作業ではなく、消費者購買データをもとにニーズをくみ取ったシステムの導入が欠かせません。

物流代行とは?

物流代行とは?

ここまでご紹介した物流の課題に対し、在庫管理から出荷、消費者に荷物を届けるまでの業務を一括して代行してくれるサービスが、物流代行です。ここからは物流代行について解説します。

物流代行で実際に代行してもらえる業務は?

物流代行のサービス内容は、商品の保管・管理や受注処理、発送準備から配送など、その業務は多岐にわたります。細かい内容は業者ごとに異なり、各種サポート対応にも差があるので、どこまで対応してくれるのかについて事前に確認しておくと良いでしょう。

代行を依頼できる主な業務名 内容
倉庫保管 在庫を倉庫に保管する。自社で倉庫を借りる必要がなくなる
検品 入庫した賞品に破損や汚れがないかをチェックする
ピッキング・梱包 出荷時に商品を一つひとつ棚から取り出し梱包する
発送 トラックやバンなど、委託業者の所有する車両で配送する
受注・決済 商品の注文を受ける。金額の請求をする
返品・返金 発送ミスなどに応じて商品を回収する。商品代金を返金する

物流代行サービスの種類は主に2つ

物流代行サービスには、大きく分けてフルフィルメントサービスと3PLの2つがあります。フルフィルメントサービスでは、配送業務に加えて受注や決済、商品を届けたあとのカスタマーサポートなど、物流関連業務を包括的に委託できます。

3PLはThird Party Logistics(サードパーティ・ロジスティクス)の略です。フルフィルメントサービスとの違いは、受注や決済などには対応せず、物流業務のみを委託する点です。

物流にかかるコスト

商品の管理やスタッフの人件費、倉庫の管理費など、自社で物流をまかなうためには多くのコストが発生します。物流代行を利用すれば、そのコストの削減が期待できます。

物流代行してもらうのにかかるコスト

WMS(倉庫管理システム)の使用料や商品を保管するためにかかった費用などは固定費として必ず発生します。また、商品の検品や梱包など、入荷や配送があるたびに発生する変動費もあります。変動費はその名のとおり量によって金額が変わっていくので、サービスを利用する前に必ず見積もりをとっておきましょう。

物流代行のメリット

物流代行のメリット

物流業務を外部委託することには、大きく分けて以下の3つのメリットがあります。

販促などの作業に集中できる

物流業者でない限り、企業における物流業務は主な業務に付随して行われています。その作業を外部に委託することで、商品開発や販売促進、企業戦略の立案などのコア業務に集中できるようになります。

物流コストを最適化できる

物流には、倉庫の賃料をはじめ、さまざまなコストが発生します。しかし、物流を外注すれば在庫を保管するスペースは不要となります。

倉庫内スタッフや配送ドライバー、相談窓口のスタッフの人件費も物流コストの一部です。しかし、繁忙期と閑散期があるなか一定数のスタッフを常時確保しておくことは、不要な人件費の発生につながります。物流代行に外部委託すれば、自社のスタッフを削減したり、別な業務に配置を変えたりでき、コストの最適化が実現します。

配送の品質を保てる

ミスなく、遅れなく商品を届けることは、実は簡単なことではありません。一方、ユーザーにとっては、商品が正しいこと、到着が早いことが当たり前です。少しの遅延やミスでもユーザーの満足度は下がり、リピートにつながらなくなる恐れがあります。その点、配送のプロである業者に委託すれば、高い配送品質につながり、顧客からの信頼を得られるでしょう。

物流代行のデメリット

物流代行のデメリット

さまざまなメリットがある一方で、物流代行を利用する際には意識しておきたいデメリットもあります。

ノウハウが自社に蓄積されない

物流業務を他社に委託するため、ノウハウが自社に蓄積されません。このことは、将来的に自社で発送を行おうとする場合に大きな障壁となる恐れがあります。

委託先との連携が必要となる

物流業務を委託したからといって、物流に関する業務が一切なくなるわけではありません。例えば、顧客情報は委託先と共有することになります。したがって、個人情報の管理体制など、信頼できる相手かどうかの見極めが重要になります。

物流代行サービスを選ぶときのポイント

EC事業者にとってメリットの多い物流代行サービスですが、業者選びは委託の成否を占うものと言っても過言ではありません。物流業務のどこからどこまでを任せられるのかはもちろん、自社の商品と同ジャンルの製品を同程度の物量で扱ったことがあるか、トラブル時のサポート体制は整っているか、誤出荷の割合はどれぐらいか、などを参考に委託先を決めましょう。業者によっては倉庫の様子を見学できる場合もあります。

サービス内容も業者によってそれぞれ異なります。自社のニーズにあったものを選ぶために、利用する前にチェックした方がよいポイントをご紹介します。

費用

自社で発送を行う場合のコストと物流代行サービスのコストを比較して、費用対効果を確認しましょう。また、何が固定費で何が変動費となるのかの確認も重要です。

保管場所

業者の倉庫が自社から遠ければ、そこまで商品を運ぶ際、または自社まで引き取りに来てもらう際に無駄が生じます。トラブル発生時の対応も負担となります。

実績

実績も業者選びのポイントとなります。配送の遅延を起こさないためにも、実績の豊富な業者を選びましょう。特に医療品や精密機器など、取り扱いに注意が必要な商品の保管や配送を委託するなら、それらの製品の物流を担った実績がある業者を選ぶことも重要です。

サポートの手厚さ

不明点や疑問点があった場合の連絡方法や対応時間、配送中のトラブルへの対応方法なども業者によって異なります。あらかじめ確認しておきたいポイントです。

まとめ

まとめ

物流代行は専門性の高い領域で、その範囲は多岐にわたります。単にA地点からB地点に物を運ぶのみでなく、製造・調達・入出荷・販促販売・消費・回収・再利用までの一連の流れを俯瞰し、時代や企業の成長段階に合わせながら対応するサービスです。

自社で物流の専門知識を携えた人材の採用をするのが難しい場合は、ぜひ物流代行を利用してみましょう。適切なコンサルティングのもと、時代や企業の成長段階に合わせた戦略を講じ、さらなる飛躍を目指しましょう。

このコンテンツの記者プロフィール

コンテンツ担当者イメージ画像

エスプールロジスティクス
コンテンツ担当者

フルフィルメントや3PL、越境ECに関する記事を多数執筆。豊富な実績やノウハウを持ったエスプールロジスティクスならではの情報を発信しています。

フルフィルメントで提供するサービス