倉庫業とは?押さえておくべき倉庫業法のポイントを紹介

新たに倉庫業に参入する際は、倉庫業法について正しく理解した上で国土交通省に登録申請を行わなければなりません。未登録の状態で営業用の倉庫を運営すると罪に問われる可能性もあるため、必要な準備について事前に十分に確認しておくことが大切です。

ここでは、倉庫業の概要や種類、押さえておきたい倉庫業法のポイントなどについて解説します。

倉庫業とは

倉庫業とは、「寄託を受けた荷物を倉庫で保管する営業形態」のことです。簡単に言うと、荷物を預かり保管することで対価を得るビジネススタイルを指しています。

倉庫業は公益性の高さから2002年までは許可制が採用されていましたが、競争力の向上や物流業務の効率化を目的に、登録制に変更されました。

倉庫業の登録申請は各地方の運輸局が窓口となっており、メールにて申請が可能となっています。

倉庫業の種類

ひと口に倉庫業と言っても、そこにはいくつかの種類があります。ここでは、代表的な3つの倉庫業の種類について解説します。

普通倉庫業

3種類の中で最も一般的な倉庫業の形態であり、単に「倉庫業」と呼ぶ場合はこの普通倉庫業を指す場合がほとんどです。「農業」「製造業」「鉱業」で扱う荷物や家財、美術品など消費者の財産を対象としており、法律上は「一類倉庫」「二類倉庫」「三類倉庫」「貯蔵槽倉庫」「野積倉庫」「危険品倉庫」「トランクルーム」の7種類に分類されます。

水面倉庫業

水面倉庫業は対象物を水に浮かべて保管する倉庫業のことで、主に原木を保管する倉庫を指しています。かつて、山で伐採された原木は河川を利用して運ばれ、乾燥して割れるのを避けるために海に浮かべて保管していました。

冷蔵倉庫業

冷蔵倉庫業は、水産物や農産物、冷凍食品や畜産物など、10度以下で冷蔵・冷凍する商品を扱う倉庫業です。実際に保管する温度帯は商品によってさまざまで、野菜などの生鮮品では0度前後が多く、冷凍食品などではさらに低い温度で管理できる設備を用意する必要があります。

倉庫業の仕事内容

倉庫業の主な仕事内容は、「商品を倉庫内に入庫してから出庫するまでの一連の業務」です。具体的な業務フローは次の通りとなります。

1.検品
工場や仕入れ先などから運ばれてきた商品の種類や数量が正しいかどうか確認します。この時、初期不良などがないかも同時にチェックします。

2.入庫
検品を終えた商品を倉庫内の所定の保管場所に収めます。商品の管理番号や在庫数量などもあわせて確認します。

3.保管
入庫した商品に適した保管状態を整えます。冷蔵・冷凍品などであれば、商品ごとに適した温度帯管理が必要です。

4.流通加工
商品の出荷準備として、包装やラッピング、機械や家具などの組み立て作業、ラベル貼りなどの加工業務を行います。

5.ピッキング
注文書などに基づいて発行されたピッキングリストを参照し、倉庫の保管場所から商品を取り出します。

6.仕分け
ピッキング済みの商品を配送ルートなどの条件に沿って仕分けます。

7.出庫
仕分けが終わった商品を配送トラックに積み込みます。

倉庫業を始めるなら知っておくべき倉庫業法とは

倉庫業を始めるなら知っておくべき倉庫業法とは

倉庫業を営むためには、その業務について定められた「倉庫業法」を知っておく必要があります。どのような法律なのでしょうか。

倉庫業法の目的について

倉庫業法はその第一条において、法律の目的を以下のように示しています。

◆倉庫業法第1条
この法律は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉庫証券の円滑な流通を確保することを目的とする。
(引用:昭和三十一年法律第百二十一号 倉庫業法 第一章 総則 目的)

倉庫には、所有者自身の荷物を保管するための「自家用倉庫」と、他人の荷物を保管するための「営業倉庫」の2種類がありますが、営業倉庫は自家用倉庫と異なり、顧客などからの荷物を保管するための倉庫として運用されます。その営業ルールを規定することで荷主の利益を守り、トラブルを抑止することが、倉庫業法の一番の目的です。

営業倉庫と自家用倉庫の違い

営業倉庫は自家用倉庫とは異なり、厳格な条件をクリアしなければ運用することができません。耐震性や耐火性に明確な規定が定められている他、水濡れや火災への対策が施されている必要もあります。火災保険への加入も必須で、加入にかかる保険料は自己負担です。また、カビや虫害への対策も必要となります。

さらに、倉庫業者は約款を定めて国土交通省に届出を行わなければならず、荷主に何かしらのトラブルが起こった際には契約書を取り交わしていなくても約款に基づいた対応が求められます。

押さえておきたい倉庫業法のポイント

倉庫業法をより詳しく見ていきましょう。特に押さえておきたいのは、以下の2つのポイントです。

倉庫業は登録制

営業倉庫は国土交通省へ約款を届け出る必要があると前述しましたが、もし無認可のまま倉庫業を運用すると、法律違反で「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(両方の場合も有)」が科せられます。

また、倉庫業の登録がされていない状態であるにもかかわらず倉庫業を営んでいることを思わせる表示をしたり、広告を出稿したりすることも法律違反とみなされ、「50万円以下の罰金」を科せられる可能性があります。

営業用倉庫にはリスクがある

国土交通省から認可を受けている営業倉庫は、倉庫業法に規定されたさまざまな基準をクリアしており、安全性の高い倉庫であることが保証されています。

その一方、倉庫業法上、荷物の保管責任は倉庫業者側にあるため、万が一のトラブルが起こった際は倉庫業者が一切の責任を負わなければなりません。そのため、営業倉庫はリスクと隣り合わせの事業であるとも言えるのです。

まとめ

ここでは、倉庫業の概要や種類、押さえておきたい倉庫業法のポイントについて解説しました。

他者の荷物を預かる倉庫を事業として運用するなら、営業倉庫としての届け出は不可欠です。また、倉庫業法は荷主が不利益を被らないためにも大切なルールであり、必ず守らなければなりません。

倉庫業を営むことをお考えの際は、安全で高品質な運営のためにも、倉庫業法をしっかりと把握し、必要な知識を身に付けて万全の準備を心がけてください。