物流コストとは

物流業務の各工程には必ず何らかのコストが発生しています。少しでも売上を上げるためには、物流コストの圧縮は欠かせません。一方、近年では人手不足などの影響もあり物流コスト比率は上昇傾向にあるのも事実です。

そこで今回は、物流にかかる費用の内訳や、物流コストを削減するための方法を紹介します。

物流コストとは

物流コストとは、物流全般にかかる費用のことです。
モノを供給者から需要者へ移動する際にかかる費用全般を指し、社内のシステムや人件費などにかかる「社内物流コスト」と、外注先に支払う輸送・運送費や倉庫・設備の賃料など「支払物流コスト」の合計が
物流コストです。

ポイントは、単なる輸送・運送費だけでなく人・システムなど物流に関わるすべての費用が物流コストであるということです。
物流の仕事に携わるのであれば、何にどれくらいお金がかかっているのか把握することは必須となってきます。
物流コストの内訳を理解し、削減する方法も頭に入れておきましょう。

物流コスト比率について

物流コスト比率とは、売上全体に占める物流コストの割合のことです。日本ロジスティクスシステム協会による「2020年度物流コスト調査報告書(速報版)」によれば、2020年度の物流コスト比率は全業種を平均して5.38%になったと報告されています。2019年度に比べて0.47ポイント上昇しており、過去20年間で2番目の上昇幅です。

回答に参加した企業のうち83.0%が物流に関して何らかの値上げを要請されており、「値上げを要請されたコストの種類」の項目において最も多かった回答は「輸送費」、続いて「荷役費」となっています。

同協会は、物流業界の労働力不足が深刻化しトラック運賃や荷役費が値上がりしていることが大幅な物流コスト比率の増加を招いたのではないかと推察しています。

物流コストの内訳は?

物流コストは、大きく分けて以下の4つの要素で構成されています。

輸送・運送費

輸送・運送費は商品を販売した際に必要な運賃のことです。
チャーター車両費用や、宅配便の配送料、自社トラックのガソリン代や減価償却費などが輸送・配送費に該当し
ます。
物流コストとしてはとてもイメージしやすく、可視化しやすい部分でしょう。
物流費用の中でも高い割合を占めるため、いかにコストを削減できるかが企業の売上に直結しているといっても過言ではありません。

また、ユーザーに商品を配送するための物流を構築する初期コストもかかるので、事前にどのような準備が必要なのか十分に検討し、費用対効果を検証することが大切です。

荷役費

荷役費は、荷役作業にかかるお金のことです。
荷物の出し入れをするときの入出庫や運搬、積付け、仕分け、ピッキングなどにかかる費用を指します。
作業量によって時間が変わり、費用も変動するため、効率化を図ることで削減が可能な部分だとも言えます。
ロケーション管理によるピッキング導線の効率化や、WMSを導入して倉庫業務を最適化するのも効果的です。
また、企業規模や荷量によってシステム導入の費用対効果が見合わない場合は、外部企業にアウトソーシングするという手段もあります。

保管費

保管費とは、商品を取引先に納品するまでの間、倉庫など一定の場所で品質や数量の保持をする際の費用を指します。
主に商品を置く倉庫の賃貸費用や、自動倉庫の管理費、火災保険などが保管費に入ります。

自社で倉庫を用意する場合と外部倉庫を契約する場合では、コストの差が大きく出る傾向にあります。
コスト削減を達成するためには、在庫の保管方法が最適化されているかを見直したり、委託先の倉庫との契約方法を最適なものに変更したりする方法が有効です。

管理費・人件費

管理費は物流システムや受発注システムなどの導入・運用費など、人件費は物流担当者や作業員、物流会社の営業担当などの給与が該当します。
システムの導入にはまとまった予算が必要になるため、事前に費用対効果を十分に検証する必要があります。
自社で物流スタッフを採用すると繁忙期と閑散期で人員を柔軟に配置しにくい側面もあることから、外注することでコストを抑える方法も考えられます。

物流コストを見直すポイントは「人件費」「保管費」「情報処理費」

物流コストを見直すポイントは「人件費」「保管費」「情報処理費」

物流コストを見直す際に着目すべき費用は「人件費」「保管費」「情報処理費」です。3つともランニングコストが発生する費用のため、効率化することで大幅なコスト削減が期待できますが、つい現状維持に走って惰性で運用し、無駄なコストを払い続ける企業が多いのです。
「人件費」「保管費」「情報処理費」の3つは定期的に見直しを行い、現状よりも安い費用で同様の業務を遂行できないか考えることが重要です。

人件費

日々の作業をどれだけ効率化できるかが人件費の削減に直結します。業務フローが最適化されているかどうか、誰でも同じ作業品質を維持できているかをまずはチェックしてみましょう。

また、自社で作業員を雇用すると人件費は「固定費」として扱われます。注文が少ない月だからと言ってその固定費を減らすことはできず、余剰人員が出ると不必要な人件費を支払っていることになります。時期によって荷量の変動が激しいようなら、外注することで人件費を「変動費」として扱うことをおすすめします。

さらに、採用・教育コストも人件費の中では無視できない部分です。

保管費

普段当たり前のように倉庫で保管している在庫も、一つひとつに保管費が発生しています。自社で倉庫を所有している場合は、過剰在庫を解消して適正在庫を維持したり、光熱費などの維持費を削減できないか見直したりすることが大切です。

外部倉庫を借りて運用しているのであれば、倉庫のサイズが適切かどうかも検討する余地があります。荷量に対して必要以上の大きさの倉庫を契約している場合は、コンパクトな倉庫に切り替えることで賃借料を削減し、作業も効率化できる可能性があります。

情報処理費

仕入れや在庫管理をはじめとした商品管理を最適化することによって、情報処理費を圧縮できます。在庫管理にWMSやハンディーターミナルなどのマテハン機器を取り入れれば、ヒューマンエラーを最小限にとどめて作業の正確性の向上にもつなげることができます。

物流コストを削減する方法とは

拠点を集約させる

物流コストの削減に効果的なのは、コストの約6割を占めていると言われる輸送費を削減することですが、大方の企業は料金交渉をして「これ以上は下げられない」というレベルまでコストカットしているでしょう。
料金を変えずに輸送費を削減するためには、積載率を上げる必要があります。
拠点を集約させることで荷物をまとめて運送でき、輸送費を削減できます。
また、拠点を集約すれば人件費や保管費用も抑えやすくなり、物流コストの削減につながるでしょう。

倉庫内での作業をルール化し、適宜見直す

作業をルール化しなければ作業効率が上がりません。
たとえば「トラックの都合がつかず、営業担当者が顧客に直接商品を持って行かなければ間に合わない」といったケースも出てきかねません。
営業車で配送した場合も本来は物流作業に該当しますが、営業担当者による配送費用のため「営業費用」に分類され、物流コストが低く見えるなどのリスクがあります。
大雑把な運用で正しい数値がわからなくなると、改善しようがありません。
そこで求められるのがルールです。ルール化は単純化でもあり、現状を把握しやすく、効率を図ることが
できます。
また、適宜ルールを見直すことも大切です。日々の改善の積み重ねが大きなコストカットにつながります。
倉庫内での作業全体を見直し、できるだけ無駄が生まれにくいルールを作りましょう。
動線やレイアウトを確認するだけでも、二重作業をやめる、導線を短くするといった改善策が見つかる
はずです。

物流管理システムの導入

物流管理では、物の数・質を維持する正確な管理が求められます。
人が管理する場合は一定の人的リソースが必要になるうえに、人為的ミスを防がなければなりませんが、システムを導入すればコストカット・効率化・管理の強化が同時に実現できます。

物流管理システムは多くあり、自動仕分け機、ピッキング・カート、シュリンク包装機などの専門機器も豊富に揃っています。
たとえば、効率的に商品を集められるピッキング・カートには、指定された商品をカートに載せると商品の重量を自動測定するシステムや、カートに入っている商品が正しいか自動的に判別するシステムが搭載されているものもあり、作業効率が大幅に上がります。
デジタル・ピッキング・システム(DPS)も効率化に貢献します。

商品が保管されている棚に電光掲示板とボタンが付いていて、ピッキングする商品が保管されている棚の電光掲示板にピッキングすべき個数が自動表示され、ボタンがピッキングの終了を知らせ、ボタンを押せば表示が消えて次にピッキングすべき場所にピッキング個数が表示されます。
このように、物流管理システムはペーパーレス化や作業効率化を実現し、物流コストを削減します。

業務自体をアウトソーシングする

物流業務をアウトソーシングすると何にどれくらい費用がかかっているかすぐに把握ができ、随時見直しを図りやすくなります。
請求が発生するため、物流コストがブラックボックス化せず可視化できるのです。
また、物流業務を物流の専門会社に任せることで、メーカーは商品の開発や製造、営業に注力しやすく
なります。
倉庫の維持管理費をカットできるのもアウトソーシングの大きなメリットです。
自社で倉庫の維持管理をすると、繁忙期に在庫をストックしていたスペースが閑散期には無駄になるなど、余分な費用が発生します。
物流をアウトソーシングすれば倉庫、トラック、物流担当者などの資産が不要になり、利益を出しやすくなるでしょう。
すでに自社で物流に関するヒトやモノを保有している場合も、手放すことで現金を得たり、キャッシュフローを向上させることも可能です。

まとめ

物流コストを削減すれば、利益を出しやすくなります。
利益を生むのは営業部門だと考えがちですが、物流部門も利益を生み出す力を持っているのです。
物流コストには削減の余地がたくさんあります。
この記事を参考に無駄な費用や物流コストをについて見直してみてはいかがでしょうか。