物流コストの増加は企業の利益に大きく影響します。近年の物価高や燃料価格の高騰から、少しでも物流コストを削減したいと考えている企業の担当者の方も多いでしょう。
では、どのようにして物流コストを削減すればよいのでしょうか。この記事では、物流コストに含まれる費用や効果的に削減する方法について解説します。
物流コストとは物流に関連する諸費用のことを指し、大きく以下の5つに分類されます。それぞれ詳しくみていきましょう。
輸送費(運送費)は、荷物を目的地まで配送する際に発生する費用です。配送業務を専門業者に委託している場合は、業者から請求される配送料が輸送費にあたります。自社でトラックなどを活用して直接配送を行っている場合は、ガソリン代やトラックの維持費、減価償却費などが輸送費に該当します。
輸送費は、荷物を運ぶ距離や届けるまでの時間、荷物のサイズや重量によって変動します。運ぶ距離や時間が長くなるほど、また、荷物のサイズが大きく、重くなるほど輸送費は高くなります。
荷役費とは、荷物の入荷・出荷にかかる費用のことです。入荷した荷物の積み降ろし・運搬・仕分け・ピッキング・梱包、注文が入った商品を出荷するための荷物の積み込みなどにかかる費用が該当します。
保管費とは、商品を倉庫内で保管・管理する際に発生する費用です。商品の保管には倉庫の賃料や光熱費が発生します。これらが保管費に該当します。自社で倉庫を持たず外部倉庫を利用する場合には、外部倉庫の利用料が保管費に該当します。
商品や荷物を梱包するため必要な段ボール・テープ・シール・緩衝材などの資材費が包装費です。また、商品の包装や梱包に必要な人件費も包装費に含む場合があります。
物流管理費とは、物流全体の管理に必要なシステムの導入費や維持費、それを担当する従業員の人件費などのことです。
物流コストを削減するためには、物流コストそのものだけではなく、企業の売上に対して物流コストが占める割合を意味する物流コスト比率を知ることが重要です。
一般社団法人日本ロジスティクスシステム協会が発表した「2024年度物流コスト調査結果」によると、物流コスト比率の全業種の平均は5.44%でした。前年度から0.44ポイント上昇しており、5.70%を記録した2021年度の調査に次いで、過去20年間の調査の中で2番目の高さとなりました。
業種別の物流コスト比率は、製造業が5.37%、卸売業が5.19%、小売業が6.38%で、すべての業種で前年度より上昇しています。
物流コストが上昇を続ける理由には、大きく分けて以下の3つの要素があります。
2024年4月、働き方改革法案においてトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が始まりました。これにより物流業界では、もともとの人手不足がさらに深刻化するとして、いわゆる「2024年問題」が叫ばれるきっかけとなりました。国土交通省によれば、2024年問題について具体的な対応をしなかった場合、2030年度には輸送能力が約34%(9億トン相当)不足する可能性があるとされています。
また、人材不足と運送の需要増に起因する人件費の上昇も進んでいます。
荷物の輸送を担うトラックや飛行機、船舶を動かすためには燃料が必要です。燃料価格は市場の変動だけでなく政治情勢などの影響を受けて頻繁に変動します。
私たちの生活に身近なガソリンの価格の変化を見れば、物流コストの上昇は明白です。1990年代の前半にはリッター110円前後だったガソリン価格は、2025年4~5月では全国平均価格で1リットルあたり185円程度まで上昇しています。
荷物の配送時間指定や再配達などのサービス拡充により、ドライバーの負担は大きく増しています。顧客満足度を高めるためにニーズに柔軟に対応することは重要ですが、配送効率の低下につながってしまう側面もあります。
ここからは、物流コストを削減するために検討すべき方法を7つに分けてご紹介します。
倉庫などの物流拠点は多くなればなるほど賃料や維持費などのコストが増すため、ある程度集約できないか検討すべきでしょう。
ただし、物流拠点を一箇所にまとめることで物流拠点から配送先までの距離が長くなれば、燃料費など別のコストが増えてしまう恐れもあります。荷物をどこから仕入れるのか、どこへ運ぶのかを考慮した上で、適切な場所に物流拠点を設けることが重要です。
ドライバーを中心に人手不足の状態にある物流業界では、ドライバー待遇改善を図る動きがあり、人件費の削減は容易ではありません。ドライバーではなく倉庫内の人件費を見直せないか、倉庫内に無駄な作業はないかを確認しましょう。
単純な作業を自動化・効率化することも有効です。自動化のためのシステムやロボットの導入には初期費用がかかりますが、長い目で見れば人件費の削減につながります。
商品の発注から顧客に届けるまでの一連の物流業務をマニュアル化すれば、業務の効率化が図れます。マニュアルがあることで、経験や勘に頼らず、新人でも確実かつスムーズに業務が遂行できるようになり、教育の時間も短縮できます。また、マニュアルによって作業の品質を平準化することで、ミスを発見しやすくなるメリットもあります。
高騰する燃料費や人件費などを材料に、配送料について取引先や顧客と価格交渉を行うことも必要です。しかし、いくら根拠があるものとはいえ、価格交渉は簡単ではありません。一定数量以上の場合は割引を設けるなど、単価は上げつつ相手にもメリットがあるような交渉を心掛けましょう。
在庫をある程度確保し、品切れにならないようにする工夫は必要です。しかし、過剰に在庫を抱えてしまうと、倉庫内でのスペースを多く取ってしまい、保管費用管理費が多くかかってしまいます。過去の受注数などのデータを分析し、商品ごと、時期ごとにストックすべき在庫数を見極め、最適化することが重要です。
自社で倉庫を抱え行っている配送業務をアウトソーシングすることも、有効なコスト削減方法の一つです。外注費はかりますが、倉庫の賃貸料や維持管理費、倉庫内で作業する従業員の人件費が削減できます。配送や梱包といった作業だけでなく、受注処理やカスタマーサービスなど物流にかかわる業務に網羅的に対応するフルフィルメントサービスもあります。
エスプールロジスティクスでは、独自のノウハウをもとに荷主様の配送状況を丁寧に分析し、荷主様・受取人様のどちらにとってもメリットを最大化できるコンサルティングを提案しています。拠点選定センターのレイアウト、導入機器の選定、オペレーション設計などに至るまで、すべて当社が一貫して代行しています。一部工程の部分的な支援も可能です。
物流におけるコストダウンや労務の手間の軽減など、物流に関する課題をお持ちの際は、エスプールロジスティクスにお気軽にご相談ください。
物流業務には、倉庫管理システムや在庫管理システム、配送管理システムなど、有効なシステムが複数あります。こうしたシステムを導入すれば、業務の進捗が可視化でき、スムーズな連携や運用につながります。
物流コストを削減することは、企業の利益を上げることに直結します。利益率が改善すれば、配送ドライバーの待遇改善や対応品質向上のための教育、管理システムの導入など、かけるべきところに費用をかけられるようになります。
ドライバーの待遇改善が図れれば、ドライバーの定着率向上が期待できます。さらに、ドライバーへの教育や管理システムの導入などによりサービス面で他社との差別化が図れれば、競争力が向上し、持続可能なビジネス運営も実現できるでしょう。
物流コストの見直しにおいては、削減することが重要なのではなく、最適化することがゴールです。必要なところに必要なコストをかけるために、適切なコスト削減をしていきましょう。
コストの最適化のためには業務の見直し、効率化が欠かせません。コスト削減でお悩みの際は、ここでご紹介した方法を参考にしつつ、物流業務をアウトソーシングすることもぜひあわせて検討してみましょう。