棚卸しを効率化する方法とは?作業の流れや効率化するメリットを解説

正確な在庫管理は、小売業をはじめさまざまな企業で欠かせない取り組みです。しかし、入荷・出荷・配送など、在庫が変動するタイミングでは、人的なミスを完全に防ぐことはなかなかできません。

現在の在庫を的確に把握するためには、倉庫で行う棚卸しが欠かせない作業です。この記事では、棚卸しの基本的な作業の流れや効率化のためのポイントをご紹介します。

棚卸しとは

棚卸しとは、倉庫内の商品在庫数を確認する作業です。また、商品の品質を確認し価値を算出する資産評価のためにも行われます。ストックしている商品の品質を確認できれば販売機会の損失を防ぐ効果も得られ、正確な利益の計算が可能となります。

棚卸しの目的について、詳しくは以下の記事をご確認ください。
>>棚卸しとは?目的や作業手順、起こりやすいミスについて紹介

棚卸し作業の流れ

ここからは、棚卸作業の基本的な流れをご紹介します。

事前準備を行う

倉庫で行う棚卸し作業は、倉庫内での入出荷作業を止めて行う場合もあります。そのため、業務に影響が出ないよう、予定された期間内で棚卸しを完了させることが必要であり、事前準備が欠かせません。以下では必要となる準備を解説します。

管理表・見取り図・マニュアルの作成

倉庫内のどこに何の在庫があるのかを把握し、どの商品をどのようにチェックするのかをあらかじめ決めておきます。棚卸しのために普段は倉庫作業を行っていないスタッフを配置することもあるため、見取り図(フロアマップ)の作成も必要です。

棚卸しには、リストをもとに商品をチェックしていく方法や、担当者が商品情報を記載した荷札を現物に貼り付けることで現物の数量を把握する方法などがあります。それぞれの方法に沿ったマニュアルの作成やその共有も必須です。

タイムスケジュールと人員確保

抱える在庫の種類や数が多ければ多いほど、棚卸しには時間と人員が必要です。ただし、棚卸しを行う日程が長くなるとミスが起こりやすくなり、どのタイミングでミスが起こったのかも把握しづらくなります。そのため、基本的には1日で終えられるように人員を確保することをおすすめします。当日のタイムスケジュールも明確に決めておきましょう。

倉庫内のどこから手をつけるのか、ハンディターミナルなどの道具は必要数あるかを確認したうえで当日に臨みましょう。

倉庫内の事前整理

円滑に棚卸しを進めるためには、倉庫内の整理も必要です。同じ商品の在庫が複数の場所に点在していると、正確に数量が把握できません。数え間違いやチェック漏れにもつながるので、棚卸しがしやすいよう、事前に倉庫内を整理しておきましょう。

実地棚卸を行う

実際に在庫を保管している倉庫で棚卸しすることを、実地棚卸といいます。実地棚卸では、在庫を一つひとつ数えていきます。

実地棚卸には、在庫のリストを見ながら実際の在庫を数えて差異を確認するリスト方式、作業者が数えた商品から順番に数えたことを示す連番のタグを付け、そのタグを最後に回収するタグ方式、在庫にあらかじめ貼り付けておいたバーコードをハンディターミナルでスキャンして数えるバーコード方式の3つ方法があります。

帳簿棚卸を行う

帳簿棚卸は、倉庫で現物を見るのではなく、帳簿上で在庫を数え管理する方法です。入庫や出庫など、在庫が動くタイミングで帳簿に在庫数を記録しておきます。

帳簿棚卸はあくまで帳簿上で数字を管理するものなので、記入漏れがあれば実際の数と相違が生まれます。実地棚卸で正確な数を把握した後、帳簿棚卸で確認を行う流れが理想的です。

棚卸し在庫の評価を行う

棚卸を行う目的は、正確な在庫数の把握と資産評価です。評価の方法は大きく2つあります。棚卸し資産を取得したときの原価を基準に評価を行う原価法と、原価法によって算定した評価額と期末時点の時価を比較して低い方の価額を評価額とする低価法があります。自社にあった方法を選ぶようにしましょう。

棚卸しを効率化するメリット

棚卸しを効率化するメリット

棚卸しの作業には、在庫数の把握や資産評価に付随する大きなメリットがあります。

作業時間の短縮とコストダウン

正確な在庫数が把握できると、不要な入庫を予防でき、コストダウンにつながります。また、棚卸しによって倉庫内が整理されるため、ピッキングや搬入・搬出の時間も短縮できます。

在庫差異の減少

完売したと思っていた商品が残っていた、想定よりも在庫が少なかったなどの問題も、正しく在庫数を把握することで解決できます。売上機会の喪失を防ぎ、戦略的な商品入荷に貢献します。

棚卸しを効率化する方法8選

倉庫で行う実地棚卸は大がかりな作業です。以下のような方法で効率化を図り、ミスや棚卸の長期化を防ぎましょう。

普段の検品を念入りに行う

普段の検品を念入りに実施しておくと、商品の破損や不足などを早期に発見できます。これにより、棚卸しの作業時間の短縮につながります。

定期的に在庫管理を行う

棚卸しの時にだけ在庫管理を行うと、どうしても在庫差異が見つかる箇所が多くなり、作業が長期化します。すべての商品においてまとめて在庫管理を行うのではなく、一つの商品、一つの棚など、細かな単位で在庫管理をしておけば、棚卸しは円滑に進められます。

棚卸し時に目印をつけながら行う

実地棚卸では、どこまで確認が終わったかの把握や一度作業を終えた在庫の再確認に時間が取られがちです。確認済の商品には特定の目印をつけるようにしておくと、無駄な作業を削減できます。

管理表を工夫する

管理表には、商品の名称や品番、個数、単価、作業者名など、棚卸しで把握したい項目が記載されています。作業を行う人数に合わせて項目を増やしたり絞ったりして棚卸しの効率化を図りましょう。

棚卸しの方法を見直す

実地棚卸には、一度に全品目の在庫を数える一斉棚卸と、商品の種類や棚ごと、エリアごとなどに分割して順番に棚卸しを行う循環棚卸があります。

一斉棚卸は在庫数が少ないときには効率的ですが、在庫数が多いと時間がかかり、通常業務に支障をきたす恐れがあります。一方、循環棚卸は通常業務と並行して作業できるメリットがありますが、分割すればするほど棚卸しの回数と時間が必要となります。自社の在庫規模に合わせて適した棚卸し方法を選ぶことが重要です。

在庫管理システムやアプリを導入する

多くの在庫を管理する際にすべて手作業で記録するのは困難です。自社が抱える在庫の追跡や発注の管理、在庫の入出庫管理、過剰在庫や品切れ防止などの機能を持つ在庫管理システムやアプリを導入することで、棚卸し時の作業量を削減できます。

みなし出庫で管理を行う

みなし出庫とは、出庫伝票を使わず、使ったとみなして処理する方法です。一つの商品を製造するために複数の部品が必要となる工場などでは在庫数をリアルタイムに入力・追跡することは困難なため、簡易的なみなし出庫を行うほうが効率的なケースがあります。

物流アウトソーシングを利用する

物流アウトソーシングとは、物流における入出荷・検品・在庫管理・返品・棚卸し・梱包といった業務を専門業者に委託する手法です。物流作業だけでなく、受注処理やカスタマーサービスといった物流にかかわる業務を網羅的にカバーするフルフィルメントサービスを提供している業者もあります。

物流業務を自社ですべて担う場合、コスト的に大きな負担がかかります。また、物流には専門的なノウハウも必要となります。質の高い物流を行うためにも、物流アウトソーシングは利用価値の高いサービスです。

エスプールロジスティクスでは、独自のノウハウをベースに荷主様の配送状況を丁寧に分析し、荷主様・受取人様のどちらのメリットも最大化するサービスを提供しています。設計段階からの丁寧な提案や一社ごとに異なる課題を見つけ改善に導くコンサルティングによって最適なオリジナルロジスティクスをデザインし、最適な運営管理体制を構築します。

物流におけるコストや労務の手間など、物流に関する課題をお持ちの際は、エスプールロジスティクスにお気軽にご相談ください。

棚卸し実施の際の注意点

棚卸し実施の際の注意点

棚卸しでは、以下の3つのポイントに注意して作業を進めることが重要です。

棚卸し表の保存義務

棚卸しの際に数量や金額などを一覧で記載した棚卸し表は、棚卸しの実施日から最低7年間保存しなければならないと法律で定められています。紛失することがないよう一箇所にまとめておき、担当者が代わる場合には確実に引き継ぐようにしましょう。

在庫の品質確認

棚卸しは在庫の数量確認だけでなく、品質の確認も伴う作業です。在庫の状態をしっかりと見極め、破損や状態不良などの異常を発見した場合は担当者に忘れずに報告しましょう。

作業時間の管理

棚卸しを効率的かつ正確に行うためには、終了時刻の目標を決め、管理者が進捗を確認しながら進める必要があります。棚卸し作業が長引くと、通常業務に支障をきたすだけでなく、倉庫の稼働率も下がってしまいます。

まとめ

在庫数と資産価値を正確に把握するために行う棚卸しには、正確性と効率性が求められます。売上機会を逃さないためにも欠かせない作業です。

とはいえ、物流を専門としない企業や在庫規模が大きな企業では、自社ですべての棚卸し業務を行うことは困難なケースもあるはずです。そのような場合は、ぜひ物流アウトソーシングの利用を検討してみましょう。

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