世界的なネットインフラの普及やインバウンドの影響などによって、ますますの拡大を見せている越境EC市場。この波に乗り遅れないようにするためには、海外の消費者に向けて商品を販売するための最適な方法を知る必要があります。
この記事では、海外顧客を獲得するために取り組みたい越境ECモールについて、そのスタートの方法やメリット、自社サイトとの違いなどについて解説します。
越境ECを始める方法は大きく分けて2つあります。一つは「自社サイトを構築して商品を直接販売する方法」、もう一つは「ECモールを利用する方法」です。
自社サイトを構築する最大のメリットは、自分たちのブランドに合ったサイトを一から作ることができることでしょう。既存のECサービスを利用するケースと違い、デザインや販売手法などのルールを細部に至るまで詰めることができます。また、顧客情報を自由に取得できるため、時間をかければかけるほどサイト構築の効果が高まっていくことでしょう。
しかし、自分たちでサイトを構築するとなると、それ相応の時間と費用がかかることになります。また、「海外の消費者に日本の商品を販売する」という越境ECの特性上、想定顧客の言語やトレンド、商習慣に精通した人材の確保も必要です。
越境ECモールは、Amazonや楽天、eBayや天猫(Tmall)など、国内外に複数存在しています。これらの越境ECモールはすでにさまざまなサービスが整備されているため、自社サイトを構築するよりも圧倒的にスピーディーに商売を開始することが可能です。
自社サイトと違い手数料が発生するものの、Amazonや楽天といった大きな看板を借りて商売ができること、決済方法や翻訳機能など越境ECをする際に困るポイントがすでに解決されていることなどのメリットは見逃せません。
自社サイトを構築するよりも簡単かつスピード感があるといったことのほかにも、ECモールを利用すべきメリットはいくつもあります。そのメリットを3つご紹介します。
前述の通り、自社サイト構築には時間と費用がかかります。しかし、ECモールを利用することで、この膨大な時間的・費用的コストを払うことなく越境ECを始めることができます。
越境EC市場そのものが拡大を続けているとはいえ、当然ながら商品の流行り廃りは存在します。そのため、「満足のいく自社サイトを作っているうちにライバルが先に進出してしまう」「流行が過ぎ去ってしまう」といったケースも考えられます。
また、費用面で忘れがちな点として、Webサイトは作って終わりではなく、保守保全のコストがかかります。海外向けの通販となると国内の通販とは違ったノウハウが必要ですし、国内にはないトラブルも想定されます。「走り出した後の安心を買う」という意味でも、ECモールの利用にはメリットがあります。
Amazonや楽天といった大きなモールの一部として商売ができると、顧客の目に触れるチャンスが増えます。また、「Amazonや楽天が認めた商品」というお墨付きも得られるため、初めての顧客にも一定の信頼感を持ってもらえるでしょう。
越境ECを行う際に壁として立ちはだかるのが、決済方法の違いです。
日本国内においてはクレジットカードや電子マネーでの支払いが主流ですが、海外ではPayPalやデビットカードへのニーズが集中しています。これらの事情を知らず、対応しないままスタートすると、「○○で払えないなら面倒だから買うのをやめよう」と顧客に思わせてしまい、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。しかし、ECモールには最適な決済方法が完備されているため、上記のような機会損失は起こりません。
決済方法と並んで越境ECの課題に挙げられるのが「言語の壁」です。商品の説明はもちろん、トラブルがあった際の対応など、どんな場合にも例外なく言語コミュニケーションは発生するため、ターゲットに合わせた言語翻訳、あるいは通訳ができる人材の確保が不可欠となります。この不安も、ECモールが備える翻訳機能によって払拭することが可能です。
ここまで越境ECにおいてECモールを利用するメリット面を説明してきましたが、一方でデメリットがあることも忘れてはいけません。
第一に挙げられるデメリットは、手数料の問題です。細かい規約はECモールごとに異なりますが、基本的に商品が一つ売れるごとに販売手数料が発生する点は注意しておくべきでしょう。販売が順調に進めば進むほど、この手数料による利益圧迫は見過ごせない額となっていきます。
Amazonや楽天といった知名度の高い名前を借りられるのは大きなメリットですが、その反面、他の店との差別化が難しくなるといいうデメリットがあります。ページデザイン的にも、基本的にテンプレートが決まっており、見た目が変えにくいため、ブランディングに工夫が必要となるでしょう。
自社の財産ともいえる顧客データの取得に制限がかかる点は、ECモール最大のデメリットです。商品ごとの販売実績や売上といった大まかなデータはECモールでも手に入りますが、細かい会員情報や購買履歴などは基本的に自社サイトでなければ入手できません。顧客に合わせた最適なレコメンドや会員施策を行いたい場合は、自社サイトを構築するほうが良いでしょう。
ECモールには、それぞれのサイトごとにローカルルールが存在します。そのため、よく調べないまま登録すると、「想定していた売り方ができない」などの事態が起きる可能性があります。自社サイト構築の手間に比べれば小さなものですが、ルールの読み込みや制限への対応にはそれなりの手間が伴います。
越境ECモールは国ごとにさまざまな種類があります。ここでは主要なECモールを国別に紹介していきます。
EC事業の始まりの国とされるアメリカは市場そのものが大きく、日本からの取引量も中国に次いで多いため、越境ECをする場合のメインマーケットとなる国です。
日本でも馴染み深いECモールであるAmazonには、基本的に日本国内版と変わらない手順で出品できるという大きなメリットがあります。世界各国に販路が広がっているため、チャンスという面でも申し分ありません。ただし、手数料については細かな規約が存在するため注意が必要です。
1995年にサービス開始した歴史あるECモールです。ヨーロッパやカナダ、オーストラリアなどの地域でも利用されているため、ターゲット顧客の幅を広げることができます。また、値段を固定するマーケット型のほかオークション型の販売方式も選択できるのが特徴で、中古品やプレミア品などの販売時にも力を発揮します。
EC大国として知られる中国は、日本からの越境EC販売額においてもトップを誇っています。越境ECのメリットを享受したい場合は一番のターゲットに据えるべき国といえるでしょう。
中国で最も大きなECモールです。天猫に出店するだけで、中国国内のEC顧客のほとんどにアプローチできます。しかし、出店審査がやや厳しめという部分には注意が必要です。言い換えれば、それだけ信頼性の高いモールであるともいえます。
京東国際は天猫の次に大きな市場を持つECモールです。初期費用や利用料がリーズナブルで、コストを抑えつつ出店できるため、ハードルが低めな点がメリットです。
台湾やシンガポール、タイなど、アジア圏の国は日本と文化が似ている場合が多く、越境ECにも進出しやすい国々です。経済的成長が進む国も多いため、価格帯の高い商品が販売しやすいという特色もあります。
PChomeは台湾国内でトップシェアを誇るECモールです。ジャンルを問わず、ありとあらゆる商品が販売されているため、多くの人がモールを訪れるメリットがあります。
Shopeeは東南アジアでも指折りの勢いあるECモールです。出品者と購入者が直接やりとりできるユニークな特徴があり、顧客に対して細やかなコミュニケーションを取ることができます。また、販売手数料やリスティング手数料が無料である部分も見逃せません。コストを抑えつつ越境ECを開始したい場合は選択肢の一つに入れておくべきECモールです。
Lazada Thailandはタイで有名なECモールです。アリババグループが運営しているため規模が大きく、マレーシアやフィリピン、ベトナム、シンガポール、インドネシアといった国々でもサービスを提供しています。今後も安定成長が見込めるECモールであり、アジアの商圏に進出する足がかりとしておすすめのサイトです。
国別の越境ECプラットフォームについて詳しくはこちらをご覧ください。
「越境ECにおすすめのプラットフォームとは?エリア別に徹底比較」
さまざまな魅力と可能性を秘めた越境ECですが、やみくもに出品しても成功を収めることはできません。海外ならではの課題を解決することで初めて、越境ECは大きな売上をもたらします。
第一に押さえるべきは現地のニーズです。日本国内で爆発的な人気を誇る商品だったとしても海外ではニーズを得られないというケースは多くあります。売りたい国ありきで出品するのではなく、自社商品をよく理解し、「この国なら売れる」といったところに出品する必要があるでしょう。
集客施策も必要な要素として挙げられます。ECモールを利用すればある程度の集客は期待できますが、それはあくまでスタートラインに立っただけにすぎません。大手ECモールにはライバルも多く、工夫を凝らさないと差別化はなかなか難しくなるでしょう。SNSや動画投稿サイトなども活用し、自社ページに顧客を呼び込むことが必要となります。
越境ECを成功させるためのポイントについて詳しくはこちらをご覧ください。
「越境ECとは?メリットから導入事例までわかりやすく紹介」
越境ECには、日本にいながらにして海外の大きな市場に参入できるという大きな魅力があります。また、決済手段の充実や翻訳機能の高精度化などにより、越境ECをする際の障壁は徐々になくなってきています。
越境ECに乗り出す方法としては「自社サイトの構築」と「既存ECモールの利用」の2つがありますが、自社の状況によって最適な選択肢は異なります。この記事を参考に、より大きなチャンスを掴むための第一歩をぜひ踏み出してください。
エスプールロジスティクスでは、越境EC展開の支援サービスとして、
「越境進出ワンパッケージサービス」「現地進出プラン」の2つをご用意しております。